サッカーの戦術の話

個人的に気になったサッカー主にJ1,J3,プレミアの試合を分析します。

【分析】2022 J2第2節 東京ヴェルディ vs 栃木SC

Jリーグに関しては2022シーズン初記事になります。
開幕してぼちぼち試合も見てはいるのですが、記事にする気力がありませんでした。今季はもう少し更新ペースを上げていきたいと思います。
今回はJ3が開幕したにもかかわらず明治安田生命J2リーグの第2節、東京ヴェルディ栃木SCの試合を振り返ってみます。

開幕戦は東京ヴェルディ(以下、東京V)はV・ファーレン長崎相手にアウェイで1-1のドロー。栃木SC(以下、栃木)はブラウブリッツ秋田に1-0の辛勝という結果でした。東京Vにとってはホーム開幕戦という位置づけの試合になります。
ちなみに東京Vは昨季途中から就任した堀監督が続投し二年目、栃木SCは時崎新監督を迎えて新しいサッカーにチャレンジしているといった状況です。

ではスタメンから確認していきます。

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東京V×栃木スタメン

(東京Vのカラーが緑なのでピッチの色を変更しています)
東京Vは4-3-3の布陣。左サイドバックの2深澤は本来は右サイドが本職のようです。栃木はルーキーの大森がセンターバックとして出場していますが、本来は中盤の攻撃的な選手のようです(サッカーダイジェストの選手名鑑では右SHになってます)。

では、実際に試合の中での動きやチームの狙いを見ていきます。
この試合は支配率にも表れている通り、東京Vがボールを保持する時間が長くなりました(62%対38%)。東京Vは後ろから丁寧に繋いでビルドアップしていくスタイルです。対して栃木は相手のボール回しに対してアグレッシブに前線からプレッシングをかけてゴールにより近い位置でボールを奪い、手数をかけずに攻撃を完結させるのが狙いのようでした。

つなぐ東京V、奪う栃木

東京Vは基本的につなぐサッカーで、GKからも丁寧にビルドアップしています。最終ラインは4人ですが、サイドバックが少し高い位置を取り、ボランチの6山本がサポートに入るため2+3の形でビルドアップします。

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栃木の守備の狙い

対する栃木は前線の3枚で2+3を見るのが基本となります。9瀬沼がアンカーへのパスコースを切りながら東京VのCBをけん制します。シャドーの二人は東京VのSBを見ながら、隙を見て外側を切りながらCBまでプレスをかけていくシーンも見られます。シャドーがプレスに行くと東京Vのサイドバックが空くため、そこには栃木のWBがスライドして対応しています。主にこのサイドに出たボールに対して、前向きに奪って攻め込むという形が序盤は機能していました。
栃木からすると3分にミスから失点するも、狙いは明確でやりたいことができているようには見えました。

東京Vの攻撃の狙い

前述の通り、栃木がアグレッシブにプレスをかけてくるので、ボール回しをサポートするために東京Vは度々27佐藤がトップの位置から低い位置に降りてきてライン間で受けるシーンが多く見られました。栃木はネガティブトランジション時に前へ前へと向かって行って奪おうとしますが、逆に奪いきれない場合は中盤や後方に大きなスペースを開けてしまうことになります。27佐藤は後ろ向きに背負ってフリックするプレーの精度が高く、降りてきてボールを引き出し、敵を引き付けて味方を前向きにプレーさせるというシーンが非常に効果的でした。2点目のシーンも27佐藤が栃木のCBである16グティエレスを引き付けて、9杉本にフリックしたところから生まれています。(このシーンに関しては23谷口の縦パスも素晴らしかったです)
また、東京Vはある程度押し込めると、2深澤が中のレーンを使って攻撃に厚みを持たせようとします。時には最前線まで走り込んで栃木のCBを引き付けます。東京Vの左WGの9杉本は足元よりもスペースで受けるのを得意とするタイプなので、このためのスペースを作るという狙いかもしれません。28:30,33:01付近のシーンがこれに該当します。

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東京V崩しの局面の狙い

60分を過ぎた辺りから、東京Vは可変的な動きがより顕著になります。
最終ラインは3+1に近い形になり、サポート役も6山本から4梶川に代わっています。ビルドアップ時は6山本は右サイドに開くことでサイドに優位性を作る、あるいは14石浦が間で受けるためのパスコースを作る効果を生み出します。このやり方が最も現れたシーンが71:50付近です。右サイドに開いた6山本が落として中の4梶川を使って相手を食いつかせ、4梶川が中盤を飛ばすパスを19小池へ送ります。29河村が右前方へ斜めのランニングでCBを引っ張ることで6山本がインナーラップするスペースを作っています。リターンを受けた6山本が中央へ入れ、最終的に内側のレーンを上がってきた2深澤が受けてフィニッシュまで持ち込んでいます。
また、東京Vは後半左にポジションを移した10新井の個での打開力をもう少し有効に使えると面白かったと思います。前半同様2深澤が中のレーンでCBを引き付けるので、サイドで1対1の状況が生まれやすい構造になっていました。10新井は足元で受けてからの突破力に優れており、そこに一発でボールを通すことができれば面白かったかもしれません。

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東京V55分選手交代後の攻撃の狙い

栃木は後半も前線からのプレスでゴールに近い位置から攻撃をスタートさせるという狙いは継続し、何度かフィニッシュに持ち込むシーンもありましたが、東京Vの守備陣を崩し切るというシーンはほとんど作れませんでした。このあたりの攻撃における連携やチーム内の決め事などはこれから構築していくことになりそうです。
試合はその後セットプレーから3点目を上げた東京Vが3-0ので完勝を収めました。点差は付きましたが両チームのコンセプトがはっきり出ており、今後の試合を観ていく上でも非常に参考になりました。

では、気になった選手を上げて終わります。

山本理仁(東京V:MF)
展開力に優れるレフティーのレジスタ。パスの精度やボールタッチも抜群なのですが、一番驚いたのは、頻繁に味方に指示を出して攻撃を指揮する彼がまだ20歳ということ。下手したら来年J1の上位どころか海外に移籍してるんじゃないかというくらいの逸材ですね。

谷口栄斗(東京V:DF)
普段は1チームから2人は書かないのですが、こちらも非常にいい選手なので書かせていただきます。Jデビュー戦のルーキーとは思えないほどの落ち着いたプレーが何より印象的でした。栃木のハイプレスをものともせず、ビシッと通す縦パスには目を見張るものがあります。本文でも触れましたが、2点目の起点となったパスは見事でした。

トカチ(栃木:FW)
J3福島での活躍によりステップアップし、今季J2デビュー。このカテゴリーでも十分やれそうな可能性を感じさせてくれました。特にハイプレスからの速攻は彼のプレースタイルにもマッチしそうで、フィニッシュの精度が向上すれば目に見える数字も増えてきそうな予感がします。

以上