サッカーの戦術の話

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【分析】2021-22 プレミアリーグ第34節 チェルシー×ウェストハム

J3のオフ期間にプレミアリーグの試合も記事にしており、その記事がきっかけでTwitterでまさかのリクエストをいただきました。嬉しい限りですが、記事が遅くなってしまって非常に申し訳ないです。GWくらいには記事にしたかったのですが、仕事やら私用で忙しくて中々まとまった時間を取れずにいました。
では、4月24日に行われたチェルシー×ウェストハムの試合を分析していきます。

上の2チームが突き抜けている状態の中、チェルシーはCL圏内はほぼ確実。ウェストハムはCL圏内に入るのはかなり厳しく、ミッドウィークのEL準決勝に焦点を当てているといった状況。この試合は同じロンドンを本拠地とするダービーマッチでもありますね。

試合の動画はこちらから
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ではスターティングメンバーから確認していきます。

スタメン(チェルシー×ウェストハム)

チェルシーは前節のアーセナル戦から4人を入れ替えたスタメンとなっていますが、特にDFラインに怪我人が増えてきています。
ウェストハムはこの試合の後にEL準決勝という大一番を控えるため、レギュラークラスのライスやボーウェンが控えに回りました。

では4つの局面から試合を振り返っていきたいと思います。

チェルシー攻撃

3-4-1-2の形のままビルドアップします。相手が3トップなので、WBも比較的低めの位置でボール回しに参加します。前進パターンはそのWBに当ててボランチが間で受けるか、あるいは左右に揺さぶってから直接ボランチが受けて運ぶパターンがあります。前進役は推進力とスピードに優れるカンテが担います。前半、ウェストハムボランチソーチェクが1つ前にポジションを上げてプレスに参加するため、ノーブルだけが残る形になります。DFラインもそのまま下がるだけなので、カンテは前を向ければ容易にスペースまで運ぶことができていました(21:19、27:18、32:33のシーン)。

チェルシーのビルドアップ・全身パターン

また、チェルシーWBがハマーズのWBを引っ張ってピン止することで、ハマーズのボランチ2枚の横が空きます。ここをマウントやハヴァーツが降りて使うシーンも多く見られました。
チェルシーは表記上はヴェルナーとハヴァーツの2トップですが、サイドに流れることが多く、ボールサイドに流れるマウント、WBと共にサイドで3vs2の局面を作ります。
また、ロフタス・チークが内にポジショニングすることで、ウェストハムの左WBを内側に引き付け、空いたサイドのスペースをハヴァーツが使う場面もありました(13:58, 47:32, 56:32のシーン)。

ハーフレーンに入るロフタス・チーク

サイドを攻略してクロスを入れるシーンでは、逆サイドのWBが必ずエリア内に入ってきます。これは前述のとおりFWの一方がサイドに流れているので、クロスに合わせるターゲットが少なくなってしまうためです。このような攻撃パターンを駆使し、前半は圧倒的にボールを保持してチャンスを作りながらも、中央を固めるウェストハムの守備陣を攻略できず、中々ゴールが生まれないという展開が続きました。
75:19頃にチェルシーは3枚同時替えを実行。中央に構えるルカクの下にマウントとプリシッチが入る形となります。やはりルカクが中央に構えることでゴール前に迫力が出ますね。83:40のPKを獲得したシーンも彼の良さが出たシーンでした。
結局PKは失敗に終わりますが、89:23頃に値千金の決勝ゴールが生まれます。このシーンは、ルカクがDFラインを引っ張ることでマイナスのクロスを入れるスペースを作っています。さらにドーソンの退場によってライスが最終ラインに入ったことで、中盤が2枚になっていたため、ボールを受ける直前プリシッチの周りに大きなスペースができていることがわかります。

チェルシー守備

チェルシーの守備プレッシング

守備は基本的に即時奪回を目指します。前からプレスをかけて高い位置で奪います。中盤も連動して高い位置を取り、チーム全体として前で奪うことに重きを置いてきます。
基本的に陣形はチェルシーも5-2-3の形になるので、中盤にスペースが空きやすくなっています。リトリートした際はボランチの脇のスペースを使われるシーンも見られました。
ボールサイドに圧縮するので、サイドを変えられたり左右に揺さぶられると前線のスライドが間に合わない場合があります。54:45ではマウントが逆サイドに寄っていてできたスペースをクレスウェルに使われて前進されています。

ウェストハム攻撃

ウェストハムの攻撃

ウェストハムはトップの位置に入るフォルナルスが中盤まで必ず降りてきて組み立てのサポート役になります。レギュラーFWのアントニオはポストワークに優れるタイプで、背負って受けるのを得意としていますが、かなり役割は異なります。フォルナルスが落ちると中央の枚数が減るため、ソーチェクがPA内まで入ってきてクロスのターゲットになります。
前線で基準点となるのはヤルモレンコで、彼がポストで受けるシーンが多くありました。チェルシー守備陣のCB-CB間から斜めのランニングで背後を取れると攻撃の幅が広がり、チャンスも作れているように見えました。69:02ではツォウファルが開いて受けてWBを引っ張り出し、フォルナルスが右に流れることでアスピリクエタも引っ張ってアスピリクエタとシウバの間のスペースをヤルモレンコが突いてフィニッシュまで持ち込んでいます。
ウェストハムはカウンターをベースに惜しいシーンも何度かありましたが、ゴールを奪うことはできませんでした。

ウェストハム守備

基本的にリトリートしてブロックを作ります。チェルシーの後ろ3枚に対して前3枚が対応しますがプレスラインは低めです。ボランチと前3枚でチェルシーボランチを挟む立ち位置を取ります(0:52)。前線の3人は守備プレスに行かず、パスコースも切れていません。外を経由されて中で起点を作られるシーンが目立ちました。21:20も簡単に揺さぶられてカンテに通されて前を向かれています。
ボランチ2枚はチェルシーボランチが下がっていってもついて行かず、ツォウファルが距離詰めながら少し前に出るくらいです。前述のとおり、このボランチの両脇のスペースを使われて攻め込まれるシーンが多くありました。
ある程度サイドを突破されますが、中央を固めて粘り強く守っていました。終盤は退場者が出て人がいなくなった部分を攻め込まれ、得点を許してしまいました。ELに向けてメンバーを温存していた中でチェルシー相手に引き分けも狙える状況だったので、あと一歩で勝ち点を逃してしまったのは痛かったでしょう。

では、気になった選手を挙げて今回も終わります。

・エンゴロ・カンテ(チェルシー:MF)
ピッチを所狭しと走り回る汗かき役。守備での貢献度が高いのは間違いないのですが、攻撃でも彼のスピードに乗ったボール運びは、守る側からすると厄介だと思います。今季はそこまで調子が良くないとか何かの記事で読みましたが、この試合でははつらつとしたプレーを見せていました。

・パブロ・フォルナルス(ウェストハム:MF)
スペイン人らしくボールを触ってリズムを作るタイプなので、中盤の間で受けて前を向いたり、時には最終ライン近くまで降りてプレーしていました。器用な選手で、前線のポジションはどこでもそつなくこなします。技術に優れながらも献身性が高く、チームのためにプレーできる良い選手だなと思いました。

※図の表記でハヴァーツとハフェルツの表記ゆれがありました。すみません。

以上