サッカーの戦術の話

個人的に気になったサッカー主にJ1,J3,プレミアの試合を分析します。

【分析】2022-23 プレミアリーグ第20節 マンチェスター・ユナイテッド×マンチェスター・シティ

プライベートが忙しく、半年以上放置してしまっていました。
少し時間が経過しましたが、面白い試合だったので記事にしてみます。が、J3はオフなので例のごとくプレミアを。

今回は第20節注目のカード、マンチェスターダービーです。
共に好調をキープしており、間のFAカップ戦を含めて連勝中のチーム同士の対戦となりました。
スタメンから見ていきましょう。

マンチェスター・ユナイテッド×マンチェスター・シティ

基本的なメンバーは両チーム変わらず。ユナイテッドはエリクセンを一列上げて、フレッジを中盤に入れていきました。

試合は終始シティがボールを保持しながら主導権を握ろうとし、ユナイテッドそれを阻止して縦に速いカウンターを仕掛けるといった構図になりました。

ユナイテッドによるキーマン封じ

ティーの保持時、ユナイテッドはキーマンとなるハーランド、デ・ブライネ、ベルナルド・シウバの3人をマンツーマンでかなりタイトに捕まえにいっていました。ハーランドがそれを嫌がってかなり下がって受けに行くことが多かったですが、ヴァランはハーフウェーラインを越えてもなおマンツーマンを崩さずに付いていくシーンもありました。
ベルナルド・シウバも時折後方のビルドアップに参加しに降りていくことがありますが、基本はカゼミロがマーク。デ・ブライネはフレッジがまさにファイターの形相で潰しに行っていました。中盤の守備的MFにエリクセンではなくフレッジを置いたのは、これらの戦い方からして納得でした。
さらにエリクセンがロドリをマークし、前線は相手の最終ライン4枚に対して3人で縦のパスコースを限定します。基本的な立ち位置はこんな感じで、ショーが余る形が基本形です。

ユナイテッドの守備陣形
回避するシティ

シティの後方でのボール保持時はサイドバックがフリーになることが多くありました。これはユナイテッドのチーム戦術的にサイドバックが下がる+前線の枚数が足りないのでしょうがないのですが、ビルドアップの出口としてウォーカー、カンセロを空けてしまっていました。
シティほどのビルドアップの質の高さを持ってすれば、数的アドバンテージがある中でプレス回避は簡単にできてしまいます。食いついてきたら浮かせてパスを通すなど、高い技術力と判断力が必要なことを最終ラインでも簡単にやってのけます。

ユナイテッドのプレスを回避するシティ

とはいえサイドバックがボールを受けても前線はユナイテッドのタイトなマークに苦しめられ、中々ボックス付近までボールを運ぶまでには至っていなかったのが前半の印象です。後方の枚数はシティよりも優位性を保ち、キーマンの3人に対して潰しにかかったユナイテッドの守備はまずまず機能していたように見えました。

これに対してシティはベルナルド・シウバが下がって後ろ3-2のような形を取ったりと色々駆け引きしていました。ベルナルド・シウバはピッチを幅広く走り回り、マークを引き付けたり、後方のビルドアップに参加したりとシティのビルドアップにアクセントを付けていました。
例えば、22:38のシーンはベルナルドが下がって受けてユナイテッドの前からのプレスを回避。ウォーカーがフリーで受けたところにこの試合初めてマラシアが出ていきました。このズレを見逃さなかったウォーカーはハーランドにパス。そこから本来マラシアに付かれているはずのマフレズがフリーで受けることに成功しています。

ベルナルドのムーブによるシティのずらし
カウンターを狙うユナイテッドの攻撃

シティのネガトラは押し込んだ状況では即時奪回を狙ってボールを囲むように素早くプレスに行きます。これをユナイテッドは逆手にとって、自陣深い位置でのポジトラ時にはほぼほぼダイレクトでフリックするパスを選択していました。シティの中盤が食いついてくるため、これが成功すると一気にチャンスになります。(13:48ごろ)
特にロドリがユナイテッドのDMFに入ったボールに対してかなり前に出て奪いに行くので、ユナイテッドからするとエリクセンがフリーになることが多く、彼が前を向いて受けるシーンが増えるとカウンターのチャンスが生まれていました。後述するように、これがユナイテッドの逆転ゴールに効いてきます。

ユナイテッドのカウンターの狙い
内側を取るシティのサイドバック

危険なエリアまで中々入り込めないシティーは、後半からサイドバックが内側で高いポジションを取る機会が増えました。元々ウォーカーをマークする役割はラッシュフォードですが、ウォーカーが内側に入ってくるため、マークがずれやすくなります。
シティの先制シーンはまさにこの"すれ"を突いた形となりました。ウォーカーとマフレズの動きにより、デ・ブライネのマークについていたフレッジがサイドに引っ張られてマークがずれました。更にウォーカーが内側から外側に向かってランニングすることでスペースを作り、デ・ブライネが危険なエリアでボールを受けることに成功しています。にしてもこのシーン、デ・ブライネのトップスピードでのボールコントロールとクロスはやはり別格だなと思いました。

内から外にランニングしてスペースを作ったウォーカー

先制後も、シティは攻守ともに前からアグレッシブな姿勢は変わらず。ユナイテッドも一貫してカウンターを狙うという構図です。ユナイテッドは先制されたことでややプレスの圧力が増したようにも見えましたが、戦い方は大きく変えてはいません。
前述の通り、シティの守備の穴はロドリの空けたスペース、あるいはロドリがカバーしきれない3列目のスペースにあります。ユナイテッドの同点シーンはまさにこのスペースを突いた形で生まれました。最終ラインを起点にビルドアップを開始するユナイテッドに対し、シティは前から奪いに行く姿勢を見せます。IHが高い位置までプレスに出ましたが剥がされ、ロドリの横でカゼミロがフリーでボールを受けることに成功しました。シティのハイラインの裏には広大なスペースができており、そこに走りこんだブルーノ・フェルナンデスが叩き込みました。
同様に81:30のシーンでも、前向きに奪ったユナイテッドはロドリの横で受けたブルーノ・フェルナンデスが起点となり、途中交代のガルナチョがPAに進入。折り返しをラシュフォードが決めて逆転に成功しました。

シティの戦い方で気になったとすれば、前半も含めてユナイテッドのカウンターで決定機を作られるシーンが何度かあったにもかかわらず、先制後も高いポジションを取り、ハイプレスを実行していたことでしょうか。とはいえ5分で逆転されるとは誰も想像できなかったと思います。勝敗を分けたのは僅かな差でした。

では、気になった選手を挙げて今回も終わります。

アントニー・マルシャル(ユナイテッド:FW)
記事内では一度も取り上げてませんが、ビルドアップをすっ飛ばして前線に繋げる狙いが多かったこの試合で意外だったのは
彼のポストプレーのうまさでした。そこそこ機能していたので前半で交代したのはちょっとびっくりしました。

・ベルナルド・シウバ(シティ:MF)
改めて言うまでもないですが、ボールコントロールのスキルに加えて味方のスペースを作る動きも秀逸で、かつ守備時の運動量も豊富。どこから攻撃を組み立てたらよいか味方に指示しているシーンも目立っていました。

以上