サッカーの戦術の話

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【分析】2023 J1第13節 FC東京 vs 川崎フロンターレ

こんにちは。
今回は、Jリーグ30周年記念試合として国立競技場で開催された多摩川クラシコFC東京×川崎フロンターレを見ていこうと思います。
この試合、平日開催にも関わらず5万6千人を超えるサポーターで埋め尽くされました。平日で5万6千とは凄すぎる...。東京近郊在住で、東京に勤務しているという方が仕事終わりに立ち寄りやすいというのが国立競技場のアクセスのメリットですね。平日にやるならアクセスのしやすさは集客に大きく影響しそうです。

余談はこのくらいにして、スタメンを見ていきましょう。
FC東京はMF松木がU20ワールドカップのため欠場、DF中村も怪我で欠場中です。
川崎は登里が2試合ぶりに復帰しています。高井、永長はU20ワールドカップで欠場となりました。

FC東京×川崎フロンターレ スタメン

両チームの対戦成績ですが、川崎フロンターレが7連勝中と、近年は圧倒しています。

では試合内容を見ていきます。
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ハマった東京の守備

基本的に川崎がボールを握りながら相手を押し込み、FC東京は高い位置でのボール奪取かカウンターで攻撃を構築していく展開が続きます。
FC東京は後ろから丁寧に繋ぐのではなく、裏のスペースを目掛けてフィードを送ります。基本的に攻撃時の矢印は前方が最優先です。守備の局面でも相手の縦パスには対面の選手が前向きにアタックする傾向が強く、攻守において「前へ前へ」というアグレッシブさが窺えました。
FC東京は序盤、ワントップのディエゴ・オリヴェイラがアンカーのシミッチを背中で消すような立ち位置を取り、深い位置では両WGが川崎のCBに外切りでプレスをかけに行きます。そのため、(解説の吉田氏も指摘していましたが、)川崎のSBが空きやすくなります。ただ、FC東京も素早いIHのスライドで川崎のSBに対応しており、川崎も中々ゴール前までボールを運べません。

川崎の深い位置でのビルドアップ

FC東京は守備でいいリズムを作りながら、早い時間に先制します。こぼれ球をつなぎ、東から右サイドでフリーの長友へ展開。中央に人数を配置してマークのずれを誘発し、流れたボールを左でフリーになった徳本が受け、家長をかわしてフィニッシュ。川崎はペナルティエリア内に結構な人数が入っていたため、逆サイドに流れるボールへの対応が少し遅れました。
続く25分、これもFC東京の狙い通りの形で追加点を上げます。シミッチに対して二人がかりでプレスに行ってボールを奪取。すぐさま左サイドを駆け上がった徳本に展開し、折り返しを阿部が詰めました。理想の展開で2点のリードを奪ったFC東京の戦いはパーフェクトと言って良い出来だったと思います。

右→左の展開で好機を作り始める川崎

リードが広がった影響もあってか、FC東京はファーストDFの位置取りはやや低くなり、WGによるCBへのプレスも減ります。4-5-1のラインでブロックを形成することになりますが、それに対して川崎も攻撃に変化を付けてきます。シミッチが左に降りてきて登里が上がったり、大南が外に開いて、山根が内側のレーンを取るような立ち位置です。3-3-4のような形で、人は流動的に変化します。

ミドルゾーンでの川崎保持

川崎は車屋→家長の対角線のフィードが多かったです。右SBの山根が内側をインナーラップすることで、FC東京の左SBの徳本が内側のレーンを気にして外に開いた家長にアプローチするための距離が空いてしまうことも影響したと思います。(あとは自由に動き回る家長がCB脇に降りるシーンもあったので、パスネットワークはそれも影響しているとは思いますが)

川崎・パスネットワーク

川崎は選手の配置を変化させながら、SBのインナーラップからFC東京のCB-SB間を突いた攻撃で好機を創出しています(36:56頃)。このシーンでは右サイドに人を集めて深く侵入してから逆サイドに展開することで、単独突破が得意なマルシーニョに時間とスペースを作っています。
41:22も右サイドで家長が時間を作ると、FC東京の中盤はボールサイドに寄ってきています。FC東京の右IH(小泉)が左サイドに寄っているため、右のCB-SB間をカバーする役割の選手がいないことになります。
上記のように川崎は右で作りながら逆サイドのハーフレーンを使ってチャンスメイクしていました。

3人の中盤の弱点

39分に川崎が1点を返します。中盤でこぼれ球に反応した脇坂がマイボールにすると、間で受けた瀬古がスペースへ運びながらドリブルを開始。ここも長友と木本の間を上手くとった宮代が足元で受け、巧みなステップで相手を外して冷静に流し込みました。FC東京は両WGが高い位置を取っていて、IHも広がってしまっていると中盤に大きなスペースができてしまいます。このFC東京の弱点を上手く突いた瀬古のボールの受け方とドリブルは見事でした。
守備側が間延びしてしまうと中盤の枚数が少ない4-3-3はどうしてもミドルゾーンで相手に主導権を握られてしまいます。失点シーンのFC東京は、スウォビィクがロングボールを蹴った時にもっと素早く最終ラインを押し上げてスペースを埋めたかったですね。

ポイントとなったた脇坂の退場

後半開始早々は東京がシンプルな攻撃からチャンスをいくつか作ります。その流れで得たFKから川崎の脇坂がファウル。一発レッドカードで退場となります。判定的にはどちらともとれるような微妙なプレーでしたが、結局VARからのOFRになってしまったら致し方無いかなと言ったプレーでした。
脇坂は無理に足を出さなくてもよかったと個人的には思いますね。川崎は前半の終盤から良いリズムで相手を動かしながらチャンスを作ることができていたので、11vs11のまま見てみたかった試合でした。

その後の展開

10人になりながらも川崎は負けているので攻めるしかありません。退場直後に中盤の枚数は2枚のままで攻撃のカードを次々と投入し勝負に出ます。
東京はリードしていることに加えて相手よりも一人多いので、少し守備のメンタリティが強くなった印象でした。攻撃時はあまりリスクを負わず、守備は少し重心を後ろに置いていました。
FC東京の守備でちょっと気になったのは途中投入されたアダイウトンの役割が曖昧だったように見えたことです。77:27頃のシーンは、川崎がGKのビルドアップから決定機まで持ち込んでいますが、このシーンはシミッチがフリーになったことからFC東京の守備にズレが生じています。シミッチへのパスコースを消す役割は本来はアダイウトンが担っていたのではないかと思います。
70分過ぎからはラインが下がり始めたFC東京に対し川崎が押し込む時間が増えました。惜しいシーンもありましたが、最後のところでFC東京は粘り強く対応し、ゴールを割らせないといった展開が続きます。GKのスウォビィクの活躍も大きかったですね。
そのままスコアは2-1で試合終了。FC東京にとっては久々の多摩川クラシコ勝利となりました。

試合全体の流れ

川崎がボールを握る展開は予想できましたが、それに対してFC東京はうまく守備ではめ込んで思い通りに試合を進めていました。FC東京は幸先よく2点のリードを奪ったのが大きかったですね。1点返されるも川崎に退場者が出たこともあって落ち着いた試合運びができていたと思います。川崎はやはり退場が痛かった。後半10人でもあれだけ攻撃に持ち込めていたことを考えると、11人のまま戦えていたらまた違った結果だったかもしれません。
5万人を超える観客にとってはアグレッシブな見ごたえのあるゲームだったのではないでしょうか。初めてスタジアムに足を運んだ方もいると思いますが、Jリーグへの興味を少しでも持ってくれたらうれしいですね。

以上

参考:
J1 第13節 FC東京 vs 川崎Fのデータ一覧 | SPORTERIA