サッカーの戦術の話

個人的に気になったサッカー主にJ1,J3,プレミアの試合を分析します。

【分析】2022 J3第4節 福島ユナイテッドFC vs AC長野パルセイロ

今年は更新増やすとか書きながら1が月以上空いてしまいました。試合はぼちぼち見ていましたが、分析に時間をかけられずで気が付けば相当前の試合になります。新しい試合を見直して分析することも考えましたが、せっかくなので記事にしました。

今回は福島ユナイテッドFCAC長野パルセイロの試合を分析していきます。

個人的にシュタルフ監督にはYSCC横浜時代から注目しているので、彼がAC長野パルセイロ(以下、長野)でどんなサッカーをするのか興味がありました。長野は負け無しで試合開始前の時点で2位です。
対する福島ユナイテッドFC(以下、福島)も服部新監督の下、開幕から3連勝で首位に立ちます。

試合の詳細はこちら

【公式】福島vs長野の試合結果・データ(明治安田生命J3リーグ第4節:2022年4月3日):Jリーグ.jp

ハイライトはこちら

www.youtube.com

 

では、スターティングメンバーを確認します。

福島×長野スタメン

長野は今季3バックと4バックを併用していますが、この試合では4バックを採用。一方の福島は開幕から3-4-2-1のシステムを継続しています。

では、4つの局面で試合を確認していきます。

・長野攻撃

組み立て、ビルドアップ時は短いパスを繋ぎながら前進します。基本的に4人の最終ラインに加えて15宮坂が絡む構図です。15宮坂は多彩なキックの質に加えてベテランらしく状況を見て長短のパスを使い分け、攻撃のスイッチを入れる選手です。
後方で前向きにボールを保持できたら、福島の3バックのサイドのスペースにロングボールを入れます。ターゲットは8宮本か16森川です。
福島の守備はプレスのスイッチが入るとWBがサイドバックまでプレッシャーをかけに来ることもあるため、長野はサイドバックが受けてからダイレクトで斜めのボールを8宮本目掛けて入れるシーンも数回ありました。

長野攻撃(ビルドアップにおける役割)

また、長野の攻撃は左サイドに流れるシーンが多く、CBの5池ヶ谷が積極的に攻撃参加してサポートします。左SBの7水谷がハーフレーンに入り、IHの6坪側がサイドに張る立ち位置を取り、外を使って内で15宮坂がフリーで受けて裏のスペースへ、という展開が多かったです。

右サイドの14三田も幅を取るよりはライン間で受け、カットインしていくタイプの選手です。以下の図を見ても左サイドからの攻撃が多くなっていることがわかります。

エリア間パス図(長野)

ただ、長野は後半の終盤押し込んだ時間帯以外はPA内への侵入も少なく、チャンスらしいチャンスはあまり作れませんでした。

後半も崩してフィニッシュへ持ち込むシーンはそれほど多くはなく、エリアの外からミドルシュートを狙うシーンが大半でした。福島のラインが下がり始めて押し込む展開になったころからチャンスらしいチャンスが増えてきて、なんとか1点をもぎ取るような展開となりました。

・長野守備

福島の3バックに対して前線3人は互いの距離間を短くしてプレスに行きます。長野の試合は開幕から少し見ていますが、相手のビルドアップ時にボランチを消すように立ち位置を取ります。中央へのパスコースを遮断し、ボール回しを外回しにさせることで、サイドに入った瞬間に前向きに奪うことが狙いです。相手のWBに対してはIHがチェックに行きます。この試合でも34:29のシーンは奪いどころをサイドに設定して狙い通り奪取に成功しています。

サイドへ追い込んで奪う長野の守備

1つ長野の守備の弱点を挙げるとすると、この試合は中盤が3枚のため、中盤にスペースができやすいことてす。IHがサイドにチェックに行くため、スライドが遅れたり相手に引きつけられると簡単にスペースを使われてしまいます。


・福島攻撃

空中戦よりも地上戦で勝負するスタイルで、自陣から丁寧にパスを繋いでいきます。ビルドアップの形は最終ライン3枚に41上畑が絡む形です。3バックはあまり外に開かず内側のレーンに立ちます。左右に揺さぶって相手を動かしながらスペースを上手く使って攻め込みます。
前述の通りサイドに出てくる長野のIHに対して、WBが絡んでIHを引き付け、中盤にスペースを作る狙いです。空いたスペースを9高橋や両シャドーが降りてきて使うシーンが多く見られました。長野が消しに来るゾーンを剥がして展開することができると、チャンスに繋がっていました。両CBが積極的に追い越していき、攻撃に厚みを持たせるのも福島の攻撃の特徴の1つです。

中盤のスペースを使う福島の攻撃

 

福島の先制シーンも左WBの20北村が相手IHを引き付けて中盤3枚の距離を広げています。そこに9高橋が落ちて基点となり、右サイドへフィード。オーバーラップした11雪江→ハーフスペースに入った26新井光と繋いで折り返しをフィニッシュに繋げています。
上記で述べたポイントが体現された先制ゴールでした。

 

・福島守備

福島は前から追いかけるというより、リトリートしてしっかり守備ブロックを敷いて構える守備をします。
前線のプレスはほとんど行かないので、相手が後方でボールを持った際はある程度自由を与えることになります。簡単に持ち上がらせすぎな場面もあります。

プレス意識が低いことから、長野の15宮坂に自由を与えすぎてしまい、フィードで起点を作られていました。それでも後方の守備ブロックは集中力が高く、良い形でシュートに持ち込ませる場面は少なかったです。

非保持時は5-4-1でリトリートするため、押し込まれて跳ね返した後のセカンドボールの回収は難しくなります。60分過ぎくらいからラインが下がり始め、押し込まれる時間が続きます。粘って耐えているものの2次攻撃に繋げられ、最終的に追いつかれてしまいました。

 

福島としては序盤にリードして試合を優位に進めていたものの、勝ち点3を逃す結果となりました。長野からすると、終盤に追いついて負けなかったことは大きかったと思います。

 

では、気になる選手を挙げて終わりたいと思います。

水谷拓磨(長野:DF)

ボールスキルに優れ、高い戦術理解度も兼ね備える左サイドバックです。パスの受け手として絶妙なポジショニングを取り、攻撃をスムーズに展開する役割を担います。インサイドでもアウトサイドでもプレーが可能で、この試合では後半途中からIHの位置でもプレーしています。

 

・北村椋太(福島:MF)

昨季は3試合の出場でしたが、今季は開幕からスタメン出場を続けています。この試合で対峙する相手に2回股抜きで交わして突破していたプレーが印象的でした。相手の裏を突くプレーが得意な選手なのかもしれません。

 

(参考)

J3 第4節 福島 vs 長野のデータ一覧 | SPORTERIA

 

以上

【分析】2022 J3第1節 テゲバジャーロ宮崎 vs ヴァンラーレ八戸

いよいよ2022シーズンのJ3が開幕しました。
J3ブログなのでしっかりJ3の試合も見ていきたいと思います。

早速ですが分析していきます。開幕戦テゲバジャーロ宮崎ヴァンラーレ八戸の試合になります。
テゲバジャーロ宮崎(以下、宮崎)は今季、髙崎新監督を迎え再始動。昨季3位と躍進を遂げたチームをどう指揮するのか注目です。
ヴァンラーレ八戸(以下、八戸)は葛野体制2年目ですが、ラインメール青森時代からチームに携わっており、チームの勝手知ったる監督が指揮を取ります。

試合の詳細はこちら
www.jleague.jp

スターティングメンバーは以下の通りです。

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宮崎×八戸スタメン

今オフ、宮崎は引き抜きが多かった印象ですが、瀧澤や工藤といった実績十分の選手を補強しています。
八戸は新卒に加えて他チームからも積極的に補強を行うなど、メンバーの入れ替えも多くありました。この試合では新加入の渡邊龍は古巣宮崎との対戦となりました。


今回は実際の試合における両チームの戦術を、局面ごとに見ていきます。

宮崎の攻撃

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宮崎の攻撃メカニズム

序盤から相手のDFライン目掛けてロングボールを入れる攻撃が目立ちました。配給役は7千布で、度々ハーフレーンの八戸の右CB付近にフィードしています。ビルドアップはCB+アンカーの7千布。GKの47植田も積極的にビルドアップに参加します。逆サイドに展開するときはCB→GK→CBと経由するため、CB-CB間の距離が遠いのが宮崎のビルドアップの特徴です。以下の図からもGKがビルドアップに多く絡んでいることがわかります。47植田は素晴らしいフィードで攻撃の起点にもなっていました。

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パスネットワーク(宮崎)

また、宮崎は左サイドを起点に攻撃を組み立てるシーンが多く見られました。特にIHが左サイドに流れてサポートに行き、数的優位を作る狙いがあったと思います。これはエリア間パス図を見てもわかります。特に

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エリア間パス図(宮崎)

アタッキングサードまでボールを運ぶと、IHの抜け出しやワンツーを使って相手DFを崩しに行くのは昨年と同様のようです。

八戸の守備

対する八戸は非保持は基本的に5-4-1のブロックですが、サイドに出た際はWBが一列上がって対応し、最終ラインはスライドして4枚になります。プレスをかけに行くときはシャドーがサイドを捨てて前に行くので、WBが宮崎のSBを捕まえに行きます。この試合、人を捕まえる動きはある程度狙い通りで来ていたと思います。

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八戸の守備の狙い

高い位置のプレスはある程度完成されていましたが、ブロックを敷いた際の対応に少し隙が見られました。先制点に繋がったシーンではSBからタッチラインに平行の向きでボールを出されると内側から19薗田に斜めにランニングされ、ここに裏から入られてキープされています。リトリートした際は宮崎のSBにボールが入ったときに内側から追いかけているため、縦のパスコースを遮断できません。縦に出させるのであれば裏のスペースはケアしておきたいところです。

八戸の攻撃

最終ラインは3枚なのでサイドのCBが空きます。また、17宮尾が宮崎の1stラインと2ndラインの間で受け、パスワークの潤滑油となります。後方からのフィードのターゲットは20萱沼です。

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八戸の攻撃の狙い

配置的には相手のIHに対してシャドーとボランチで数的優位を作ります。15:41付近では38藤井から縦パスを通していますが、宮崎の10徳永が14前澤と48相田を両方を見なければいけない状況を作りだしています。
またボールサイドのCBは押し上げた状態では積極的に攻撃参加し、攻撃に厚みを持たせます。特に右サイドの6小牧の攻め上がりが後半はよく見られました。47:26付近、62:30付近がこれに該当します。

宮崎の守備

宮崎はネガトラ時はボールホルダーに厳しく奪いに行きます。守備ブロックを敷くときは4-5-1で、最終ラインはそれほど高くありません。両WGも守備時は最終ライン付近まで戻って守備をします。WGがポジションをずらされると、八戸のサイドのCBがフリーになり、チャンスを与えてしまうシーンが数回ありました(特に左WGの48新保の後ろを使われるシーンが何回かあった。早々の交代の要因の一つ?)。
ボールを持たれると重心が下がっていく中、シュートまで持ち込まれる局面も多く見られましたが、GKの48植田を中心に無失点に抑えました。

以上、宮崎と八戸の試合を局面に分けて分析してみました。

では最後に気になった選手を上げて終わります。

・大熊健太(宮崎:DF)
正確なキックが持ち味で、昨季はアシストランク5位の6アシストを記録しています。この試合は左サイドから攻撃を組み立てるシーンが多い中、サイドバックとして起点になっていました。


・宮尾孝一(八戸:MF)
小気味よくボールに触って試合のリズムをつくるゲームメイカー。ヴェルディのJrユース出身ですが、なんかそれっぽいなぁと思いました。彼のようなタイプの選手は個人的に好きです。


参考
J3 第1節 宮崎 vs 八戸のデータ一覧 | SPORTERIA

【分析】2022 J2第2節 東京ヴェルディ vs 栃木SC

Jリーグに関しては2022シーズン初記事になります。
開幕してぼちぼち試合も見てはいるのですが、記事にする気力がありませんでした。今季はもう少し更新ペースを上げていきたいと思います。
今回はJ3が開幕したにもかかわらず明治安田生命J2リーグの第2節、東京ヴェルディ栃木SCの試合を振り返ってみます。

開幕戦は東京ヴェルディ(以下、東京V)はV・ファーレン長崎相手にアウェイで1-1のドロー。栃木SC(以下、栃木)はブラウブリッツ秋田に1-0の辛勝という結果でした。東京Vにとってはホーム開幕戦という位置づけの試合になります。
ちなみに東京Vは昨季途中から就任した堀監督が続投し二年目、栃木SCは時崎新監督を迎えて新しいサッカーにチャレンジしているといった状況です。

ではスタメンから確認していきます。

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東京V×栃木スタメン

(東京Vのカラーが緑なのでピッチの色を変更しています)
東京Vは4-3-3の布陣。左サイドバックの2深澤は本来は右サイドが本職のようです。栃木はルーキーの大森がセンターバックとして出場していますが、本来は中盤の攻撃的な選手のようです(サッカーダイジェストの選手名鑑では右SHになってます)。

では、実際に試合の中での動きやチームの狙いを見ていきます。
この試合は支配率にも表れている通り、東京Vがボールを保持する時間が長くなりました(62%対38%)。東京Vは後ろから丁寧に繋いでビルドアップしていくスタイルです。対して栃木は相手のボール回しに対してアグレッシブに前線からプレッシングをかけてゴールにより近い位置でボールを奪い、手数をかけずに攻撃を完結させるのが狙いのようでした。

つなぐ東京V、奪う栃木

東京Vは基本的につなぐサッカーで、GKからも丁寧にビルドアップしています。最終ラインは4人ですが、サイドバックが少し高い位置を取り、ボランチの6山本がサポートに入るため2+3の形でビルドアップします。

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栃木の守備の狙い

対する栃木は前線の3枚で2+3を見るのが基本となります。9瀬沼がアンカーへのパスコースを切りながら東京VのCBをけん制します。シャドーの二人は東京VのSBを見ながら、隙を見て外側を切りながらCBまでプレスをかけていくシーンも見られます。シャドーがプレスに行くと東京Vのサイドバックが空くため、そこには栃木のWBがスライドして対応しています。主にこのサイドに出たボールに対して、前向きに奪って攻め込むという形が序盤は機能していました。
栃木からすると3分にミスから失点するも、狙いは明確でやりたいことができているようには見えました。

東京Vの攻撃の狙い

前述の通り、栃木がアグレッシブにプレスをかけてくるので、ボール回しをサポートするために東京Vは度々27佐藤がトップの位置から低い位置に降りてきてライン間で受けるシーンが多く見られました。栃木はネガティブトランジション時に前へ前へと向かって行って奪おうとしますが、逆に奪いきれない場合は中盤や後方に大きなスペースを開けてしまうことになります。27佐藤は後ろ向きに背負ってフリックするプレーの精度が高く、降りてきてボールを引き出し、敵を引き付けて味方を前向きにプレーさせるというシーンが非常に効果的でした。2点目のシーンも27佐藤が栃木のCBである16グティエレスを引き付けて、9杉本にフリックしたところから生まれています。(このシーンに関しては23谷口の縦パスも素晴らしかったです)
また、東京Vはある程度押し込めると、2深澤が中のレーンを使って攻撃に厚みを持たせようとします。時には最前線まで走り込んで栃木のCBを引き付けます。東京Vの左WGの9杉本は足元よりもスペースで受けるのを得意とするタイプなので、このためのスペースを作るという狙いかもしれません。28:30,33:01付近のシーンがこれに該当します。

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東京V崩しの局面の狙い

60分を過ぎた辺りから、東京Vは可変的な動きがより顕著になります。
最終ラインは3+1に近い形になり、サポート役も6山本から4梶川に代わっています。ビルドアップ時は6山本は右サイドに開くことでサイドに優位性を作る、あるいは14石浦が間で受けるためのパスコースを作る効果を生み出します。このやり方が最も現れたシーンが71:50付近です。右サイドに開いた6山本が落として中の4梶川を使って相手を食いつかせ、4梶川が中盤を飛ばすパスを19小池へ送ります。29河村が右前方へ斜めのランニングでCBを引っ張ることで6山本がインナーラップするスペースを作っています。リターンを受けた6山本が中央へ入れ、最終的に内側のレーンを上がってきた2深澤が受けてフィニッシュまで持ち込んでいます。
また、東京Vは後半左にポジションを移した10新井の個での打開力をもう少し有効に使えると面白かったと思います。前半同様2深澤が中のレーンでCBを引き付けるので、サイドで1対1の状況が生まれやすい構造になっていました。10新井は足元で受けてからの突破力に優れており、そこに一発でボールを通すことができれば面白かったかもしれません。

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東京V55分選手交代後の攻撃の狙い

栃木は後半も前線からのプレスでゴールに近い位置から攻撃をスタートさせるという狙いは継続し、何度かフィニッシュに持ち込むシーンもありましたが、東京Vの守備陣を崩し切るというシーンはほとんど作れませんでした。このあたりの攻撃における連携やチーム内の決め事などはこれから構築していくことになりそうです。
試合はその後セットプレーから3点目を上げた東京Vが3-0ので完勝を収めました。点差は付きましたが両チームのコンセプトがはっきり出ており、今後の試合を観ていく上でも非常に参考になりました。

では、気になった選手を上げて終わります。

山本理仁(東京V:MF)
展開力に優れるレフティーのレジスタ。パスの精度やボールタッチも抜群なのですが、一番驚いたのは、頻繁に味方に指示を出して攻撃を指揮する彼がまだ20歳ということ。下手したら来年J1の上位どころか海外に移籍してるんじゃないかというくらいの逸材ですね。

谷口栄斗(東京V:DF)
普段は1チームから2人は書かないのですが、こちらも非常にいい選手なので書かせていただきます。Jデビュー戦のルーキーとは思えないほどの落ち着いたプレーが何より印象的でした。栃木のハイプレスをものともせず、ビシッと通す縦パスには目を見張るものがあります。本文でも触れましたが、2点目の起点となったパスは見事でした。

トカチ(栃木:FW)
J3福島での活躍によりステップアップし、今季J2デビュー。このカテゴリーでも十分やれそうな可能性を感じさせてくれました。特にハイプレスからの速攻は彼のプレースタイルにもマッチしそうで、フィニッシュの精度が向上すれば目に見える数字も増えてきそうな予感がします。

以上

【分析】2021-22 プレミアリーグ第23節 チェルシー×トッテナム

今回は1月22日に行われたプレミアリーグ第23節チェルシー×トッテナムの試合を分析します。前回の試合分析はカードがあまりにも渋すぎたのか、全然読まれることもなかったので普通にビッグマッチを取り上げてみました。もはやJ3へのこだわりはないですね。

余談ですが、知ってる選手が多いので有名なチームの方が分析はしやすいです。

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トッテナムはコンテ監監督就任後、リーグ戦負けなしでここまで来ています。

チェルシーカップ戦は勝利しているものの、リーグは5試合勝利なし。なかなか対象的な両チームです。

いつものようにスタメンから確認します。

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スタメン(チェルシーvsトッテナム)

どちらのチームも今季は3バックと4バックを相手によって使い分けていますが、このカードでは共に4バックでスタートしてきました。

主力選手の状況は、チェルシーが両サイドバックのチルウェルとジェームズが怪我。メンディーがアフリカネーションズカップでメンバー外となっています。トッテナムソン・フンミンが怪我で離脱中です。

 

前半

前半はチェルシーが7割以上ボールを保持し、優位に試合を進めます。

チェルシーは4-1-2-3のような形でインサイドハーフ(IH)にコバチッチとマウントが入り、アンカーにジョルジーニョが入ります。SBがハーフスペースに位置し、ウイングが幅を取ります。同サイドのIHが内側で角度を付けて受けるか、サイドの深い位置へ斜めにランニングしてボールを引き出します。

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チェルシー保持時の配置と狙い

対するスパーズはフラットな4-4-2でブロック。チェルシーのSBにはSH、ウイングにはSB、IHにはIHが付いて対応しますが、立ち位置が明確なチェルシーの選手たちにダイレクトに繋がれて後手に回っていました。

また、チェルシーはサイドを変えるときや、攻撃をやり直すときはアンカーのジョルジーニョを必ず経由しています。トッテナムの守備陣系だと3列目のジョルジーニョが余る形になるため、ここがフリーになるシーンが多いです。視野が広く、プレスを受けながらもダイレクトに叩く技術に長けるジョルジーニョが攻撃のリズムを作っていました。

サイドで深さを取ってラインを下げさせ、フリーのジョルジーニョを経由して決定的なチャンスを作るというのがチェルシーの狙いです。

トッテナムはリトリートした守備からシンプルなカウンター攻撃を仕掛けるシーンもありましたが、チェルシー守備陣のプレスバックの速さとインテンシティの高さに手を焼き、シュートまで持ち込むシーンはほとんど作れませんでした。

 

後半

後半に入ってもチェルシーの優位は変わらず、後半開始直後にシエシュのゴラッソで先制に成功します。ハドソン=オドイがタンガンガを振り切り、スピードに乗ってPA付近まで攻め込み、逆サイドのシエシュへ。迷わず振り抜いた左足から放たれたボールは芸術的な弧を描いてゴールへと吸い込まれました。

さらに先制から間もない54分、左サイドで得たFK。マウントの正確なキックに合わせたチアゴ・シウバのヘディングでチェルシーが追加点をあげました。

 

これで前ががかりにならざるを得ないトッテナムは、56分の選手交代で4-1-2-3にシステムを変更します。

トッテナムは保持時、ウイングが中に入り、サイドバックが開いて高い位置へ入るのが基本形です。ウイングの選手がボールを引き出しながらサイドを崩すのが狙いです。

対するチェルシーはマークする相手に変更はなく、サイドバックはそのままハーフレーンのウイングをケアし、両ウイングが相手のサイドバックに付く形になります。

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56分~トッテナムシステム変更後の保持時の立ち位置

これを錯乱させるためにトッテナムはウイングとサイドバックがクロスに入れ代わるプレーも見られました。59:58秒付近のシーンでは右サイドでルーカス・モウラが斜め外側に落ちて、ドハーティが内側に斜めにランニングしています。

ただ、トッテナムはボールと逆サイドのサイドバックも高い位置を取ろうとするため、サイドで奪われた瞬間に逆サイドの後方に大きなスペースができてしまい、狙われるシーンもありました(66:46付近)。

 

チェルシーのプレス意識が多少低くなったことも影響し、トッテナムはボールを保持する時間が前半よりも増えました。しかし、後半も変わらず高いインテンシティを見せるチェルシーの中盤を攻略できず、人にしっかり付かれている状態で守備ラインを崩せない時間が続きます。

中盤のウィンクスに代えてブライアン・ヒルを投入するなど変化をつけようとしたトッテナムでしたが、結局終始チェルシーのペースで試合は進み、終わってみれば2-0の完勝となりました。

 

では、気になった選手をあげて終わりにします。

 

・マテオ・コバチッチ(チェルシーMF)

中盤で攻守に走り回り、球際のデュエルを制したかと思えば、終盤はジョルジーニョ交代後にはも下がってリズムを作る役回りも担っていました。アスピリクエタもそうですが、とにかく何でもできる彼のような選手はどの監督からも重宝されるタイプだと思います。

 

ピエール=エミール・ホイビュア(トッテナムMF)

派手なタイプではないですが、的確な位置を取って攻撃の芽を摘んでいました。試合展開的に攻撃に関与するシーンは多く見られませんでしたので、今後そのあたりの能力にも注目して見ていきたいと思っています。

 

以上

【分析】2021-22 プレミアリーグ第18節 ウェストハムvsノリッジ

気が付いたら更新せずに年が明けていました。Jリーグもオフになったので海外サッカーの分析でもしてみようと思います。

タイトルの通り、1月13日に行われたプレミアリーグの試合を分析してみます。

有名どころのチームの分析は私よりも優秀な多くの戦術マニアの方がそこら中に記事を書いていると思うので、(ファンの方には申し訳ありませんが)ちょっとマイナーな試合を観てみました。

 

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ウェストハムは昨季終盤の好調を維持し、ここまで4位とCL圏内も狙える順位に付けています。

一方のノリッジはシーズン序盤での監督交代に踏み切るなど試行錯誤しますが、現在最下位と苦しい状況。

では、スタメンから確認していきます。

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スタメン(ウェストハム-ノリッジ)

システムは両チームともに4-2-3-1のミラーゲームの配置です。(海外選手の表記は所々間違いがあるかもしれませんが、ご了承ください)

ウェストハムの3クレスウェルは怪我から復帰したとのことです。あまり前情報はありません。

早速試合の内容を見ていきます。

 

予想通りというか、順位通りウェストハムが押し込む展開が続きました。

ノリッジは守備的に振る舞い、極力引いて構えて跳ね返したところを素早く前線に送って攻撃に繋げるスタイルのようです。守備時は全体がリトリートし、ライン設定も低め。2人の守備的MFも最終ライン近くまで下がります。

「受け身」になる相手に対してウェストハムはボールを保持しながら主導権を握っていました。ウェストハムは相手の中盤のスペースを使って(作って)優位に試合を進めていきます。

左右可変のビルドアップ

ウェストハムのビルドアップは右回りか左回りかによって陣形が異なります。

右回りにボールを回す場合はCB2枚に左サイドバックの3クレスウェルが落ちてサポートします。左回りの場合は守備的MF(DMF)の10ランシーニが右後方に落ちてサポートします。

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ウェストハムのビルドアップ陣形

ノリッジは22プッキ、35イーダの2枚がファーストプレスをかけてくるため、ウェストハムは後方3枚で優位性を持たせていました。+1の役割の41ライスはバランスを見ながら一列前でボールを受けてサイドや前線にボールを展開します。

中盤スペースの攻略

ノリッジのライン全体的に低めで、DMFも最終ライン近くまで下がるため、相手の中盤に大きなスペースを与えてしまいます。

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中盤のスペースを使うウェストハム

配置で深さを取り、相手の中盤とFWの間のスペースを41ライスや10ランシーニ、8フォルナルス、11ヴラシッチが利用して保持しながら前進させます。スペースへ2列目の選手が降りて後ろ向きに楔のボールを受け、そこにマークを食いつかせて、叩いたら付いてきたマークの背後にボール展開するといったプレーでアタッキングサードに侵入していきます。ノリッジは常にリアクションから入るため、動かされてスペースを使われており、守備が後手に回っている印象でした。

ウェストハムの崩し・仕掛けの局面

ウェストハムのフィニッシュに至るまでのメカニズムを見ていきます。

左サイドを起点に攻め込むことが多いウェストハムは、左で深さを取ってそのままクロスを上げるか、最後は10ランシーニがパスの供給役になるシーンが多いです。

また、20ボーウェンはスタートポジションこそ右SHであるものの、フィニッシュの局面では常にゴール前に入り込んできています。それにつられてノリッジの左SBの21ウィリアムズは中央に絞らざるを得なくなり、ウェストハムの右サイドには広大なスペースが生まれます。

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右サイドのスペースが空く

そのスペースに右SBの5ツォウファルが常に高い位置を取って入ってきます。本来左SHの17ラシツァがケアするポイントですが、監督の指示なのかわかりませんが、なぜか常時中央寄りのポジションを取っています。結果的にノリッジは5ツォウファルへの対応が遅れ、簡単にクロスを上げさせるシーンが目立ちました。(先制ゴールのシーンも左からのクロスを拾った5ツォウファルがまさにこの記述通りの展開でクロスを上げて20ボーウェンが決めています)

ノリッジの攻撃の狙いは・・・

ノリッジはボールを保持するシーンが少なかったこともありますが、攻撃に明確な狙いを感じることはほとんどありませんでした。実力的にも劣るため、守備的に振舞うのは致し方なかったとはいえ、もう少しアイディアが欲しかったですね。

強いて上げるならば4ギブソンから35イーダへのロングフィードが一つポイントになっていました。35イーダは個人技術に優れ、唯一ノリッジで攻撃のアクセントをつけられる選手だったと思います。

 

まとめ

後半、疲れからかウェストハムの多少ラインが下がってきたところで、ノリッジは35イーダを起点にクロスからチャンスになりそうなシーンもありましたが、終始試合を支配したウェストハムが盤石の勝利を収めました。

最後にいつものように気になった選手を挙げて終わりにします。

・ジャロッド・ボーウェン(ウェストハムMF)

恥ずかしながら初めて知った選手でしたが、この試合は彼の独壇場でした。フィニッシャーとして非常に優秀で、点の取れるSHとしてビッグクラブから声がかかってもおかしくないのではないでしょうか(ただ、最下位のノリッジ相手の試合なのでこの試合だけで評価するのは違うかもしれませんが)。

 

・ミロト・ラシツァ(ノリッジMF)

若く才能溢れる選手という印象ですが、いかんせん守備時のポジショニングが気になりました。あれが監督の指示なのかどうかはわかりませんが、この試合では悪いように目立ってしまっていました。まだ若く、周囲からの期待も大きいようなので、今後の成長に期待したいと思います。

 

以上

【分析】2021 J3第20節 テゲバジャーロ宮崎 vs アスルクラロ沼津

4回目の分析は2021年9月26日(日)に行われた明治安田生命J3リーグ第20節 テゲバジャーロ宮崎アスルクラロ沼津です。

諸事情によりバタバタしていて1ヶ月以上も前の試合の記事になってしまいましたが、せっかく書いたので公開します。
 
テゲバジャーロ宮崎(以下、宮崎)は3試合負けなしと好調、アスルクラロ沼津(以下、沼津)は2連敗中です。
前回対戦は1-1のドローでした。

では、スターティングメンバーから確認します。

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スタメン(宮崎-沼津)

宮崎、沼津共に4バックのシステムです。
宮崎は前節と全く同じ布陣で臨みます。沼津は前節からDFラインの選手に入れ替えがありました。

両チームのスタイルですが、宮崎は自陣ポゼッションの指数がリーグで1位です。カウンターの指数もかなり低い値です。この試合でも確実にボールを繋いで前進していました。
沼津もハイプレスで速い攻めというより、セットした守備から自陣で奪ってボールを繋ぐサッカーを展開していました。
テゲバジャーロ宮崎 2021 チームスタイル[攻撃セットプレー] | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB

アスルクラロ沼津 2021 チームスタイル[攻撃セットプレー] | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB

では、試合の中での細かい動きやチームの狙いを見ていきます。

宮崎の中盤空洞化オフェンス

宮崎のビルドアップは7千布が降りてセンターバック2人と最終ラインを形成していました。ここに17前田が絡んで3+1で前進します。両サイドバックは高い位置を取り、サイドハーフは中側のレーンに入って相手のディフェンスラインを牽制します。そして中盤の枚数を減らして一気に深い位置にボールを送ります。

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宮崎保持時の立ち位置

対する沼津は人に付くのではなくスペースを埋める形で守ります。4-4-2でブロックを敷きますが、相手の最終ラインでボールを保持された時、沼津の中盤の選手はパスコースを切れず、プレスにも行けずで効果的な立ち位置を取れているとは思えませんでした。
特に宮崎の高い位置を取るサイドバックへのパスコースが空くことが多く、沼津のサイドハーフの立ち位置も微妙でした。
が、沼津はある程度侵入を許す中で、DF-MFラインをコンパクトに保ち、前半は失点することなく折り返しています。

自由を与えられる23徳永

このメカニズムでの攻撃が増える中、宮崎は23徳永の動きが1つキーとなっているようにも思えました。
中盤の空いたスペースを使って下がって受けるのか、相手の最終ラインと駆け引きして裏を狙うのか。ある程度原則に基づいたビルドアップが展開される中で、どちらかによって数的優位を作り出すことが求められます。

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パスソナー(宮崎)

パスを受ける本数が同ポジション逆サイドの18渡邊と比べて23徳永が圧倒的に多いことがわかります。彼の判断がビルドアップの出来を左右しそうです。

沼津の攻撃パターン

沼津のビルドアップはCB2枚+ボランチ2枚というのが基本のようです。場合によってはSBが下りてくることもあります。
攻撃のキーマンはキャプテンの15菅井です。最後尾に位置してビルドアップに絡みながら、サイドへの長短のパス、縦への楔のパスなど攻撃のあらゆる局面に絡んでゲームメイクしていました。
基本的な立ち位置としてはSBが高い位置を取るのですが、宮崎のSHがこれに付いていく為、宮崎のボランチ脇にスペースが生まれます。ここを利用して15菅井がゲームメイクするというのが基本パターンでした。

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沼津保持時の陣形

前線のアタッカーは、味方がボールを持つと流動的にポジションチェンジします。20佐藤はサイドに流れることが多く、先制シーンでも左に流れた20佐藤と33高橋が深い位置まで入り込み、サポートに入った15菅井がエリア外で受け、素晴らしいミドルを決めています。

宮崎の得点に繋がったポイント

後半に宮崎が逆転に成功していますが、2点共に起点となった楔のパスは7千布からでした。前半は最終ラインから両ワイドへの展開や、降りてくる2列目への楔のパスが多かったですが、中央の最前線を目掛けたボールを送ることが多くなりました。最前線にボールを送り、さらにその近くに味方を多く配置しているので、畳み掛けるような攻撃を実行していました。
結果的にこの2点が試合を決め、宮崎の逆転勝利となりました。

まとめ

両チーム攻撃がオーガナイズされていましたが、より洗練された宮崎が力を発揮した試合となりました。
特に今回は詳しく記載しませんでしたが、宮崎はトランジションが速く、高い位置で奪ってからの速い攻撃が見事に機能していました。

最後に気になった選手を挙げて今回の分析を終わります。

・菅井拓也(沼津MF)
ベテランらしい落ち着きでまさにゲームメイクの中心を担う選手。長短のパスを織り交ぜて中盤を支配する。もう少し若ければステップアップしていく姿を見れたかも。

・徳永祐大(宮崎MF)
得点に直結するなど目立った働きがあるわけではないが、そのフリーランニングによって宮崎の攻撃を活性化させるキーマンとなっている。戦術理解に優れているため、どんな監督にも重宝されそう。


参考
sporteria.jp

以上

【分析】2021 J3第17節 Y.S.C.C.横浜 vs FC岐阜

第三回の試合分析は2021年9月4日(土)に行われた明治安田生命J3リーグ第17節 Y.S.C.C.横浜FC岐阜です。J3は中断期間があったので、久々の分析となります。

今季二度目の対戦となるこのカード、前回対戦はY.S.C.C.横浜(以下、YS横浜)がアウェーでFC岐阜(以下、岐阜)を下して今季の初勝利を飾っています。

YS横浜は前節は試合がなかったため、再開後の初戦となります。岐阜は再開初戦となった前節の福島ユナイテッド戦で0-4の大敗を喫しました。

16節までの順位は岐阜が5位、YS横浜が10位です。

 

では、スターティングメンバーから確認します。

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スタメン(YS横浜-岐阜)

前回の分析時はYS横浜は4バックでしたが、今回は4土舘をリベロに置いた3バックを採用。

一方の岐阜は得点ランク2位の10川西や、アシストランク上位の41吉濱をベンチからも外すといった大胆なメンバー選考をしてきました。

3バック採用の利点

以前YS横浜の試合を見たときは、4土舘がアンカーの4バックを採用していました。4土舘はキックの質が高く、特に長短のロングフィードYS横浜の攻撃の起点となっている反面、アンカーとして広い範囲をカバーしなければならない上で、守備時のポジショニングの悪さが大きな欠点となっていました。

その意味でも4土舘をリベロに置くことはポジショニングの悪さという欠点をカバーし、かつGKからのビルドアップ時に攻撃の起点に素早くなれるという、まさに適材適所の配置と言えるでしょう。

両チームのスタイル

YS横浜は自陣から丁寧にビルドアップしてボールを運んでいくチームです。自陣ポゼッションの指数がリーグで3位と数値にも表れています。

一方の岐阜は自陣ポゼッション、敵陣ポゼッションの指数がリーグでワースト。また、ショートカウンターの指数がリーグ2位です。よって、岐阜は相手にある程度ボールを持たせながら、前線で奪って素早くゴールを奪うことが狙いです。

www.football-lab.jp

では、実際に試合の内容を分析していきます。

 

保持VS非保持

予想通りYS横浜が圧倒的にボールを支配する展開となりました。

岐阜は非保持時は5-3-2のラインを引いて守備をします。YS横浜のビルドアップは基本的に4土舘から始まるのですが、この選手がボールを持った時、前線の2人はまずはコースを消す立ち位置を取ります。中央からサイドにボールが出た際は23大西、8中島を含め人数をかけてプレスに行きます。また、YS横浜のビルドアップに対して、岐阜の14本田がYS横浜の6佐藤にマンマークをしているようにも見えました。

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非保持・岐阜のプレス

つまり、岐阜としてはYS横浜のビルドアップの開始点である4土舘からボールが出るのをスイッチとして、前線で素早いプレスをかけて奪うことが狙いです。実際に岐阜はコースを限定しながら2列目が連動してプレスをかけることでロングボールを蹴らせたり、2列目で奪うシーンも何度か見られました。

ただし、岐阜はプレスのスイッチを入れると、中盤より前の選手5人がかなり前がかりになりますので、MF-DFのライン間にスペースができます。YS横浜は岐阜の前線からのプレスを逆手に取り、低い位置からこのライン間のスペースに楔のパスを狙うようになります。

10:21付近のシーンでは、YS横浜の6佐藤が岐阜14本田を引きつけながら下りていき、スペースを空け、そこを7神田が使うことで攻撃に繋げています。

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YS横浜のプレス回避

上記の例ではMF-DF間にスペースが生まれるという話ですが、これはそもそも岐阜の中盤より前の5人が前がかりになることが前提になります。

実際に、YS横浜はこのスペースを狙ってはいるものの、惜しい場面でカットされてしまうなど、攻撃にうまく繋げられないシーンもありました(8:08付近、28:40付近など)。

中盤の数的優位を狙う

こうして基本的にはYS横浜がボールを保持しながら試合を進めていく中、徐々にYS横浜は岐阜の守備の構造上の穴を突くようなプレーが増えてきます。

37:06付近のシーンです。両WBが高いポジションをとることで相手のWBをピン止めし、空いた2列目のスペースに7神田に加え、18柳園も下りてきます。これでYS横浜は3-4-3のような形でポジションをとります。

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中盤3枚のサイドのスペースを狙う

岐阜の中盤3枚は4枚のMFを見ることになり、数的不利に陥ります。このシーンでは7神田が下りて受けることで、時間とスペースを確保した状態で前向きにプレーすることが可能となります。10:21付近のシーンと異なるのは、2トップの一角も中盤まで下りて数的優位を作ることで、相手のプレスの出来によらず攻撃をスタートすることができる点です。

前半30を過ぎたあたりから18柳園が左の中盤に下りるようになったので、YS横浜は意図的にビルドアップ時のやり方を変えていたと考えています。後半に入るとFC岐阜の立て続けのカウンターによって2失点し、18柳園に代えて30菊谷を入れ、この狙いをよりはっきりとさせていました。

要所で仕留める岐阜

前述の中盤のスペースを自由に使えるようになり、後半は再三YS横浜が攻め立てる展開となりましたが、結果だけ見れば0-3と岐阜の圧勝となりました。

試合を通してもチャンスの数はYS横浜が圧倒していました。ゴール期待値もYS横浜が2.49、岐阜が1.72であり、YS横浜が勝っていてもおかしくありませんでした。

理屈で解説するのは難しいのですが、岐阜はチャンスの数自体は少ないものの、得点シーンなどを見ると攻守の切り替えの速さや圧力をかけるタイミングの良さなどが光りました。

例えば先制点のシーンでは、ボール奪取後、数的優位を作れると見るや中盤の選手が一斉にスプリントしてプレーのスピードを上げています。この辺りの判断力は岐阜の方が上でした。

あと、岐阜は前半は殆ど繋ぐシーンが皆無でしたが、得点シーンではショートパスを繋いでチャンスを作っていました。あえて前半はロングボール主体であることを相手に意識させて、相手の状況を見てここぞというときショートパスから素早い攻撃を展開していたのかなと思いました。

まとめ

チームのスタイルがそのまま出た試合展開になりました。

YS横浜がボールを握るも、前線の激しいプレスで中々攻め込ませない岐阜。YS横浜はビルドアップの構造を変えて中盤を制圧しますが、トランジションスピードが得点に直結し、カウンターから得点を重ねた岐阜が圧勝する結果となりました。

 

最後に両チームのポイントと個人的に気になった選手を挙げて、今回の試合分析は終わりたいと思います。

 

YS横浜

・攻撃のキーマンは4土館と7神田。特にビルドアップの開始点は4土館となることがほとんど。

ウイングバックが高い位置を取り、中盤を4人にして有効な場面を作れるようにはなったが、トランジション部分に課題がある。

岐阜

・非保持時は中盤より前が精力的にプレスをかけて前で奪うことが狙い。

・攻撃はほとんどロングボール主体だが、自分たちの形で奪うことに成功した時はショートパスで素早く運ぶことも。

トランジションが速く、奪ってから人数をかけて素早い攻撃で仕留める。

 

個人的に気になった選手

・土館賢人(YS横浜DF)

ビルドアップの全権を担っていた。長短織り交ぜたキックの質は眼を見張るものがある。個人的には3バックの中央は向いてると思う。課題は守備力。

 

・深堀隼平(岐阜FW)

エースの川西が怪我?で欠場の中いきなり2得点に絡む活躍を見せた。ハードワークを厭わず、後半最後までボールを追いかけた。少ないチャンスを大事にするチームにとって彼の決定力は今後も活かされると思う。

 

以上